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HABU’S VOICE

写真家になりたい人へ 2015


ホームページを開設した当時の2000年、
VOICEで最初に書いたのが「写真家になりたい人へ」という文章でした。
あれから15年、今でもたくさんの人がアドバイスを求めにきます。
当時はリバーサルフイルムしか使っていませんでしたが、今はデジタルの世の中。
発表する場所もネットだったり、SNSだったり、すっかり環境も変わりました。
スポンサーとして応援してくれていた各メーカーも、主力商品はデジタルとなり、
デジタルカメラで撮らざるを得ない状況になりました。
最後まで、フイルムを残す活動をしてきましたが
3年前から、ほぼすべての写真をデジタルで撮るようになりました。

孤独になって自分の心と向かい合う時間を持つのが難しい時代。
ボタンをいくつか押せば、世界中いつでも誰かと繋がれる時代。
そんな時代に、自分が本当に撮りたいもの、表現したいものを見つけるのは大変です。
日常生活の中で周りを見渡しても、あまり心はときめきません。

僕が撮りたいのは、自分の心の奥底にしか存在しない美意識。
誰かみたいな写真じゃなくて、自分の人生できっと一度しか出会わない瞬間。
長い距離を走って車を降りて、
目の前に広がる風景を見て「わー!」という声が出た、その瞬間の風景。
「わー!」とか「あっ!」と思わせるエネルギーが撮りたいのです。
その気持ちを写真に封じ込めれば、見た人も同じような思いを持ってもらえる、
そう信じて自分の写真を追いかけてきました。

技術やセンスの向上を磨くのはもちろんですが、
ぶれても、ボケても、水平線が斜めでも強いエネルギーの写真はあります。
エネルギーはカメラの性能じゃないし、画質じゃない。
来るか来ないか。
一枚の写真が自分の心のどこかに、共鳴するかしないかなのです。

だから機材はコンパクトカメラであれ、スマホであれ、フルサイズ一眼であれ何でもいいのです。
もちろんプロを目指すのであれば、そこにクオリティや画質の向上を目指すのは当然です。
完成度を高めるということです。
でも一番大切なのは、あのとき思った「わー!」にどれだけの人が共感してくれるかです。

デジタル時代になって写真をプリントせず、
スマホやパソコンの中に保存しただけで終わりという人が多くなっています。
必要な時が来たらプリントすればいいや、あるいはネットに公開して終わり。

写真が上手くなるには人に見せることが大切です。
たくさんの人に共感してほしいと思って写真を撮っている、それがプロですから。
だからプリントしてください。
お家プリントでいいのでA4ぐらいに。
それを50枚ぐらいファイルしてください。
気に入った写真が撮れたらどんどん入れ替えてください。
そのファイルを家族でも友達でもどんどん人に見せてください。
人の声に耳を傾けて、自問自答してください。
そのうち「自分」が何を表現したいのかが見えてくるはずです。
それがあなたの写真です。
50枚まとまることで、一枚では伝わらない、あなたが表現したい「世界」が
相手に、そして自分にもバイブレーションとして伝わるようになってきます。

表現方法は自由です。技術的な先生はいても、
何を表現したいかは、自分の心の中にしかないので、それを見つけて追求すること。
その長い訳の分からない心の旅をすることで、
誰かみたいじゃない写真家は出来上がるんだと思います。
納得する50枚が集まったら、写真展を開くとか、
出版社に持って行って写真集にしてもらうとか、チャレンジの始まりです。

僕が今開催している写真展「夢に向かって」の母体となるプレゼン用のブックは、
見せに行った会社約10社に断られました。
2年後にたまたま、以前に行った会社が新しい企画を探していて、
小さなフォトカードブックになりました。
それが思った以上に売れ、最初の写真集「空の色」になりました。
その5年後に僕が当作りたかった、写真詩集「夢に向かって」を作らせてもらいました。

以前から僕は写真家は小説家のようなものだといってきました。
何をテーマにして何を表現するのも自由。
でも、誰かと同じ写真家を世の中は求めていない。
あなたのオリジナリティで世の中をびっくりさせてほしいんです。
写真は言葉ではないので、見る人が感じるイメージや感情、それがすべてです。

自分らしさを見つけるのは大変ですが
そこに成功の鍵が眠っているんだと思います。


(写真家は100人いたら、100通りの生計の立て方があります。
この話は僕の話であって、他にもいろんなやり方で成功してる写真家がたくさんいます。
僕のやり方だと、あんまりお金持ちになれないかもしれません。あしからず)

2015年9月23日